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チャロへ。 [ブログ]

チャロ。

僕が小学校6年生の頃に、チャロと出会った。

父親と妹と公園に遊びに行くと、公園の中の小さな小屋に子供達の人集りが出来ていた。

覗きに行くと、ダンボールに子犬がいた。

捨て犬だった。


うちは母が犬を飼うのをずーっと反対していた。

しかしまだ当時4歳だった妹がそこでダダをこねた。

『犬を持って帰らないとここから動かない!』

妹の意思はかなり固く、泣き喚きそこから動こうとしなかった。

お人好しの父親は、勢いかテキトーか、しょうがないから持ち帰ろうとダンボールを抱えて車に乗せた。

家に帰ると当然大反対の母。

よくある話かもしれないが、自分達で散歩とかお世話をするようにとの条件で半ば無理矢理飼えることになった。

まぁ、これもよくある話かもしれないが、最終的に沢山面倒をみるのは母になるのだが。



思えば、チャロは犬1倍、他の飼い犬より淋しい思いをさせてしまったのかもしれない。


チャロは雑種で、特に頭のいい犬ではなかった。


ボールを投げても追いかけるけど、僕たち飼い主のところまで咥えて持ってくることはないし、ドラマや映画みたいに、自分から飼い主の顔の横などで寝たりもしない。

少しばかり、距離があるワンコだった。

捨てられてしまった影響なのかなと、今になって思う。

そんなチャロに、僕たちはもう一度淋しい思いをさせてしまった。


チャロが7歳のときに、両親が離婚した。

今まで働いていなかった母親は働くようになり、僕は東京で働くようになり実家を出た。


そして弟は結婚して家を出て、妹も就職で家を出た。


歳月が過ぎ、人が成長していくというは同時に”実家”に人がいなくなっていくというはしょうがない。
むしろ、喜ばしいことでもある。


でも、チャロにとってはまた1人の時間が信じられないほど多くなってしまった。


どうしようもないことかもしれないけど、どうしようもないことを後悔してしまう。


僕は死に関して、あまりリアルに経験したことがない。

はじめてのお葬式は、父方のひいおばあちゃんが亡くなったとき。

これはほとんど記憶がない。

次は、転校した小学校で同じクラスの子が亡くなってしまったとき。
これも転校したてで、その子は病気をわずらっていて学校に来れないほどの症状だった。

そして亡くなってしまった。

お葬式でまわりの生徒が泣いている中、僕はどうしていいかわからなかった。



そして母方のひいおばあちゃんが亡くなった。

僕は高校生だった。


しっかりと、葬儀の場で死の顔を見た。

しかし、泣けなった。

自分は冷たい人間なのかもしれない。



後輩が亡くなった。

酔っ払い運転で、尋常ではスピードを出して障害物に激突し即死だった。

この後輩は僕にとって、少し嫌な存在だった。

今この場ではじめて言う。


これを見ている関係者の人たちは腹をたてるかもしれない。

その後輩に僕はものすごくいいように使われていた。

高校生のときに乗っていた単車を半ば無理矢理貸すことになってしまった。

壊れて帰ってきた。

そいつの暴走族の先輩のケツ持ちに使われていたようだった。

それはさすがに許せなくて、弁償してもらうようにいったけど。

逃げられた。


だから”死んでよかった”なんてさすがに思えないけど。

悲しむという気持ちは、薄かった。

申し訳ない。その気持ちでいたことは今になって天国の後輩に謝りたい。



大切な人の母親が亡くなった。

いろいろな事情があって、お母さんに会えたのは1回きりだった。

僕の顔を見て、亡くなる前に安心してくれていたみたいだった。


それでも、自分にとって十分なくらい身近な死だったのに、僕は泣けなかった。

そして、後を追うように、大切な人の飼っていたワンコも亡くなってしまった。


一緒にはいてあげることができたけれども、一緒に泣いてあげることができなかった。

ごめんなさい。

本当に冷たい人間だと心の中で何度も思った。

自分の手が温かいのは、本当に冷たい人間なんだという迷信をとことん信じた。




3ヶ月前まで元気だったチャロが、ここ1ヶ月で急に弱くなった。

あっというまに歩けなくなり、寝たきりになった。

それでも水もご飯も食べていたので、まだずーっと生き続けるんだと疑わなかった。





でも、すぐにご飯もあまり食べなくなった。



ある日、流動食のご飯が美味しくないのかなと思って、ホームセンターで色々買ってきた。

『新しいの買ってきたよ〜』って言って差し出すと食べてくれた。


すごい!食べられるじゃん!えらいね〜って言ったりしてた。



そのあと、30分後ぐらいに、いきなりチャロは痙攣を起こした。


はじめての経験に僕はとまどった。


チャロのそばに一緒にいてくれた彼女が自分の耳をチャロの胸に当てる。


「ゆっくり撫でてあげて」と言われその通りにした。



チャロって言いながらゆっくり撫でた。


痙攣は止まらない。



「頑張れ、頑張れ」と彼女が言う。



撫で続けた。


声をかけ続けて、なるべく優しく、ゆっくり撫でた。




ゆっくりと、痙攣が止まった。



チャロの目が黒くなった。


目の前で手を振っても何も反応がなかった。


子供みたいだけど、「死んじゃったの?」と彼女に尋ねた。


「チャロ頑張ったね」と言われて


涙がとまらなかった。


ブワーって、一気に出てきた。



ご飯無理矢理あげちゃったから死んじゃったんだと言う自分を


彼女は「違うよ」って言ってくれた。


「最後に食べてくれたんだよ。チャロちゃん優しいから」


涙がとまらない。


今まで流さなければいけなかった分が全部出たんじゃないかと思うぐらいに
涙が出た。



雑種のくせに本当に美人だった。


17年間今まで病気一つしなかった。


みんなが飼ってるような羨ましいぐらい懐いてくる犬ではなかったけど。


大好きでした。


さみしい。

本当にさみしい。



今更この歳になって、チャロから死の尊さや本物の寂しさや悲しみを全部教わった。


映画で得られるものとは比べものにならないぐらいの悲しみ。


さみしい。


そのままでいいから、ずっと寝てていいから家に居てほしい。


ダメかな?


俺は君に対して、ここに綴ったような気持ちを抱いてます。


この8年間ぐらい、家を離れていてごめんね。


せっかく帰ってきたのに、一緒に過ごせる時間は短かったね。



遅いんだよバーカって、怒ってるかなチャロ。



こんな家族だったけど、少しは幸せでいてくれたのかな。


色々聞きたいことが沢山あるよチャロ。



チャロの葬儀が二日後となって、
亡くなってから1日だけ、家にそのままの状態でいた。

最後の夜はチャロの側で寝た。

この愛らしい姿がこの家で最後だと思うとまた涙が溢れた。

素直にさみしかった。

次の日葬儀の業者の方が来てくれた。

とても、とても親切な方だった。

焼かれたチャロは口の先から歯までしっかり残っていて、業者の方はものすごくチャロのことを褒めてくれた。


骨になったチャロを見て、どうしようもない悲しみがスーッと消えていった。


拾われて、この家で17年間育って、葬儀もやれて、しっかり骨が残って、家族みんなで骨を拾って、骨壷に全部入って。

よかったなぁって思った。


17年間ありがとう。


ありがとうチャロ。



さよならチャロ。



いつまでも、忘れません。




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